遺産分割協議書を作成中
遺産分割協議書を作成中です。
登録前なので行政書士としてではありません。報酬もなしです。念のため(^_^)
とはいえ、
当事者間の協議には関与せず、
・相続人を調査・整理する
・原案を作成する
・すでに成立した協議を書面にするのであれば争訟性はないため、
「事実証明に関する書類の作成」に当たり、
行政書士の業務の範囲内なので、違法ではありません。
行政書士の遺産分割協議書作成の報酬
ちなみに、遺産分割協議書の作成ってどのくらいの報酬なのか見てみました。
一例ですが、
・遺産分割協議書の作成のみ→30,000円~50,000万円前後
・相続人・財産の調査を含む場合→80,000万円~200,000万円前後
*相続人の人数や戸籍調査の難易度によって幅があり、
事務所によっては相続財産の数%と率で計算するところもあるようです。
今回の事案
父==========母
|
|————–|—————–|
子1 子2 子3
(死亡)
家族構成は、父母と3人の子供。
被相続人は息子さん(独身・子供なし)。
相続人は父母。
(民法889条1項1号)
被相続人の財産は、不動産(土地・評価額1億円)のみ。
死亡保険金は5,000万円
被保険者:息子
契約者=保険金支払人:父
受取人:父
です。
遺産分割協議の内容は、
「すべて母に相続させる。」というものです。
遺産分割協議書の書式例
遺産分割協議書はネットを検索すればいろいろな書式が出てきます。
注意すべきは、生命保険金は相続財産には含まれないため、
遺産分割協議書に記載する必要はないという点です。
遺 産 分 割 協 議 書 被相続人 甲野太郎 本籍地 東京都千代田区霞が関1番1号 生年月日 昭和20年8月15日 死亡日 平成26年3月1日
被相続人葉上記の通り死亡したので、その相続人甲野花子 及び甲野二郎は、被相続人の遺産につき次のとおり分割す ることを協議した。 1、次の不動産は、甲野花子が取得する。 所 在 東京都千代田区霞が関1丁目 地 番 1番1 地 目 宅地 地 積 123.45㎡ 2、本遺産分割協議の時点で判明していない被相続人の 遺産が後日発見された場合は、全て母である甲野花子が相続する。 以上のとおり分割協議が成立したので、これを証するため、 本書を作成し、各自署名押印する。 平成25年4月1日 東京都霞が関1丁目1番1号 甲 野 花 子 印 東京都霞が関1丁目1番1号 甲 野 二郎 印
遺産分割後の相続税の対象となる財産は?
遺産分割をする場合に気になるのが税金です。
相続税は相続人等が被相続人を死亡したことを知った日の翌日から
10か月以内に申告しなければなりません。
相続税の基礎控除と税率
残された家族の生活保障のため、
相続財産に対する課税には「基礎控除」があります。
相続財産から、
5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)
を除いた残額が相続税の課税対象となります。
ここにいう「法定相続人の数」には、相続放棄をした人も含まれます。
*平成27年1月より、
基礎控除3,000万円+(600万円×法定相続人数)
に減額される法改正が施行される予定です。
今回の事例では、法定相続人が父母だけですので、
基礎控除5,000万円+2,000万円(1,000万円×2)=7,000万円
となります。
相続財産は不動産だけですので、仮に不動産が1億円とすると、
1億円―7,000万円=3,000万円が課税対象となります。
不動産の評価額が7,000万円以下であれば、税金は0円です。
ちなみに、相続税の税率は以下のようになります。
課税標準 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
3億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円超 | 50% | 4,700万円 |
課税標準は、基礎控除額を除いた各相続人の相続分を基礎とします。
今回の事案に当てはめると、
法定相続人である父母の各法定相続分は1/2ずつ(各5,000万円)ですが、
父は相続放棄をしており、母が単独で1億円を相続することになります。
とすると、母は、
(1億円―700)×0.3=2,790万円
を相続税として申告・納税する必要があります。
死亡保険金の取り扱いについて
では、死亡保険金についてはどのように扱われるでしょうか?
遺産分割協議との関係
保険金は保険契約に基づいて支払われる金銭ですので、
相続財産には含まれません。
よって、遺産分割協議書にも記載する必要はありません。
相続税との関係
死亡保険金については、
(1)保険金を支払っていたのが誰か(契約者)?
(2)受取人は誰か?
により、相続税・贈与税・所得税(住民税)と適用される税の種類が異なります。
(a)被相続人が保険金支払人で法定相続人が受取人となっている場合
例:亡くなった夫が自分で生命保険をかけて支払い、妻(子)が受取人となっていた。
→民法上の相続財産には該当しませんが、
相続税上は「みなし相続財産」として相続税の課税対象となります。
よって、相続税法上の基礎控除額を超えた部分が課税対象となります。
(b)被相続人が保険金支払人で法定相続人以外が受取人となっている場合
例:亡くなった夫が自分で生命保険をかけており、世話になった赤の他人を受取人にしていた。
→遺言で相続させるのと同じなので、相続税の対象となります。
ただし、生活基盤の異なる第三者の生活保障をする必要はないため、
相続税の基礎控除の適用はありません。
(C)被相続人以外が保険金支払人でその者が受取人となっていた場合
例:妻が死亡した夫の生命保険の支払いをしていて妻が受取人だった場合
→契約者である妻は死亡していませんので相続の問題ではありません。
妻は自分の掛けた保険契約の対価を受け取っているので「収入」となり、
所得税・住民税の課税対象となります。
保険金の額により所得税の課税率が変わります。
(C)被相続人以外が保険金支払人で支払人以外の法定相続人が受取人となっていた場合2
例:夫の生命保険金を妻が支払っており、子を受取人としていた場合
→契約者である妻は死亡していないので相続税の問題ではありません。
妻は子供のために生命保険をかけていたことになり、贈与税の課税対象となります。
なお、贈与税の控除額は1年で110万円です。
表にまとめると
被保険者 | 保険金支払人 | 受取人 | 税の種類 | 基礎控除 |
夫 | 夫 | 妻・子 | 妻・子に相続税 | 5,000万円+α |
夫 | 夫 | 第三者 | 第三者に相続税 | なし |
夫 | 妻 | 妻 | 妻に所得税・住民税 | *年間の保険金支払額による |
夫 | 妻 | 子 | 子に贈与税 | 110万円/年 |
となります。
なお、被保険者=夫、支払人=夫、受取人=妻となっていた場合、
保険金を受け取った妻が子に分ける場合には、子に贈与税がかかります。
今回の事案
被保険者は子、契約者は父、受取人は父なので、
(b)のケースに該当し、
生命保険金を受け取った父が所得税・住民税を支払うことになります。
というわけで、遺産分割協議書を作成すること自体はそれほど難しいことではありませんね。
行政書士として仕事をする場合には、
戸籍謄本を集めて相続人関係図を作成するのがメインとなると思います。