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初心者でも分かる!行政書士試験の勉強方法から合格後の開業まで

行政書士の納税申告real estate

【目次】

 
 ◆ 税務署等に提出すべき書類
 ◆ 納税に関する基礎知識
 ◆ 経費の範囲
 ◆ 専用口座の開設
 ◆ 会計ソフトの活用
 ◆ 税金Q&A

  最終更新日 2014年3月21日


税務署等に提出すべき書類

  
  個人事務所の開業を例に、行政書士登録後に税務署に提出すべき書類は以下の通りとなります。

  ・開業届
  ・青色申告承認申請
  ・個人事業開始申告書

  ただし、どの書類も必須ではなく、提出しなかったからといって罰則が科されるわけでもありません。


  ◆個人事業の開廃業開業届出書(開業届)


   提出先は納税すべき市町村管轄内の税務署です。

   開業したら必ず届け出なければならないわけではありませんが、
   まだ収入の見込みがなくとも、これから稼ぐぞという意気込みで届け出る方も多いです。

   後々青色申告をする場合には提出が求められるので、
   本格的に開業する場合には早めに届け出ておいた方がよいでしょう。

   開業の事実があった時から1か月以内に税務署に届け出ます。

   廃業する場合にも届け出る必要があります。

   →個人事業開業届の詳細(国税庁)


  ◆青色申告承認申請


   所得税の基礎控除額は38万円ですので、
   給与所得者以外で個人の年間の収入が38万円を超えると所得税の申告・納税義務が生じます。

   青色申告は細かく帳簿をつける義務が生じますが、年間65万円の控除が受けられるため、
   本格的に開業される場合には届出をした方がメリットが大きいです。

   提出先は納税すべき市町村管轄内の税務署です。

   新規開業の場合、開業から2か月以内に届出をすれば、同年度の確定申告から適用されます。
   開業届と一緒に申請しておけば、二度手間を省くことができます。

   青色申告のメリット・デメリットの詳細は、次の「納税に関する基礎知識〜青色申告」で。


  ◆個人事業開始申告書


   提出先は都道府県税事務所・市町村役場(双方に提出する場合と片方のみで足りる場合とある)です。

   提出期限は自治体により異なります。
   開業後「すみやかに」というあいまいな自治体や開業後15日以内とする自治体など。

   開業届は所得税・住民税その他のための書類、
   個人事業開始申告書は事業税のための書類です。

   もっとも、確定申告で事業所得の有無は分かりますので、あまり厳密には運用されていないようです。

   なお、個人の事業税は年間290万円以上の収入がなければ課税されません。
  

納税に関する基礎知識


 (1)納税義務が生じる年間収入


   行政書士として開業する場合、@所得税 A住民税 B個人事業税 C消費税 の納税義務が生じます。

   @所得税について(国税)

    税率は収入が多いほど高くなる累進課税です。
    非給与所得者の場合、非課税限度額は年間38万円です。

    つまり、給与取得者以外の個人の場合、
    年間の収入(経費を除く)が38万円を超えると所得税の納税義務が発生します。
    (パート・アルバイト収入や専従者、配偶者・扶養控除がある場合を除く)

   A住民税について(地方税)

    税率は一律10%です。非課税限度額は年間35万円です。
    1年間の収入が35万円を超えると住民税の納税義務が発生します。
   (所得税と同様、パート・アルバイト収入・配偶者・扶養控除がある場合を除く)

    課税額・控除額は自治体によって異なる場合がありますので、
    詳しくはお住まいの市町村にお問合せください。

   B個人事業税(地方税)

    年間の事業所得290万円以下は免税となります。
   
   C消費税について(国税・地方税)
    
    納税義務の免除は年間の売上額が1,000万円以下です。
    個人で開業する場合であっても、1年間の売上額が1,000万円以上であれば
    消費税を別途納税する必要が生じます。

    個人事業者の場合、前々年の1月1日〜12月31日の売上額を基準に算定されます。

    →詳しくは消費税納税義務の免除について(国税庁)


 (2)納税には申告が必要


    納税するには事前に確定申告が必要となります。

    申告を怠れば「無申告加算税」、
    申告漏れがあれば「過少申告加算税」、
    悪質な虚偽の申告があれば「重加算税」

    が課されるなどのペナルティが生じます。

    個人で開業する場合には、税理士さんにお任せしない限り税金の知識が必須となります。


 (3)所得税の申告の種類


    確定申告には、「白色申告」「青色申告」(簡易簡易簿記・複式簿記)があります。

    「白色申告」「青色申告」は収入額による区別ではなく、
    面倒な帳簿をつけてくれればその分、控除額も大きくなりますよ、という制度です。


   白色申告

    年間の収入から経費を差し引いた利益を所得として計算するだけの簡易な申告方法です。
    費目ごとに毎日帳簿をつける必要はないので、手間も知識も不要です。

    メリット
     ・原則として年間所得300万円以下の場合には帳簿の記帳・保存義務がない
     ・帳簿の記帳・保存義務がある場合でも、年間の収入・支出等お小遣い帳程度で足りる

    デメリット
     ・所得控除枠がない(収入が多いと損)
     ・赤字繰り越しの特典がない(その年限りの相殺)
     ・帳簿がないため、事業内容によって利益以上の税金を課される恐れがある(利益推計)
     ・不良債権(取りはぐれた売掛金)を経費にできない
     ・家族に従業員として給与を支払っても経費にできない(専従者制度なし)

   *改正:平成26年1月から、年収300万円以下の場合でも、
    事業所得(農業を含む)、不動産所得を生ずべき事業を行う場合には
   「白色申告」での帳簿記帳・保存義務が課されることになりました。


   青色申告

    青色申告には、
    ・簡易簿記による場合(特別控除は10万円まで)と
    ・複式簿記による場合(特別控除は65万円まで)
    の2種類があります。

   ◆簡易簿記青色申告

    簡易簿記方式は、現金・預金の入金・支出、光熱費・家賃等の経費を
    おおまかに帳簿に記載する青色申告です。

    メリット
    ・簡単な帳簿の記載で年間10万円まで控除を受けられる

    デメリット
    ・簡易とはいえ、帳簿義務がある割に控除額が小さい
  
   ◆複式簿記青色申告

    複式簿記は
     ・主要簿「仕訳帳」「総勘定元帳」
     ・補助元帳「現金出納帳」「預金出納帳」「売掛帳」「買掛帳」「経費帳」「固定資産台帳」
    の記載が必須となるため、帳簿が複雑で若干知識が必要です。

    メリット
    ・年間65万円まで控除を受けられる
    ・最大3年まで赤字を繰り越しできる(個人事業主の場合)
    ・正確に帳簿に記載しているので、収入以上の税金を課される恐れがない(利益推計なし)
    ・不良債権の一部を経費に計上できる(個人の場合5.5%・1年限り)
    ・家族に従業員として給与を支払う場合には「専従者」申告をすれば節税できる

    デメリット
    ・どの項目に何を記入すればよいのか知識が必要
    ・一から帳簿を作成するのはかなり大変

    もっとも、市販されている計算ソフトを利用すれば、
    自動的に集計して納税額まで計算してくれるので、
    使い方に慣れてしまえばお小遣い帳をつける感覚でできます。
    →会計ソフトの活用

    年間65万円の控除というメリットが大きいため、
    報酬を払ってでも税理士さんにお願いするという事業主も多いです。
    (税理士さんに丸投げする場合、年間10万円〜40万円前後の報酬が必要となります)


   白色申告と青色申告(複式簿記)で納税額を比較

    売上500万円、経費100万円を例に白色申告と青色申告で納税額を比較すると以下のようになります。


    白色申告の場合

    5,000,000円−1,000,000円=4,000,000円 (売上−経費=所得金額)
    4,000,000円−380,000円×0.2=724,000円  (所得金額−控除×税率=納税額)

    青色申告(複式簿記)の場合

    5,0000,000円−1,000,000円=4,000,000円
    4,000,000円−(380,000円+650,000)×0.2=594,000円


    所得税だけの単純計算ですが、納税額の年間差額は13万円となります。

  
所得税の速算表
課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え 330万円以下 10% 97,500円
330万円を超え 695万円以下 20% 427,500円
695万円を超え 900万円以下 23% 636,000円
900万円を超え 1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円超 40% 2,796,000円



















  →所得税の税率と簡易計算ソフト(国税庁)


 (4)その他の申告

   ◆減価償却資産の申告

    軽自動車や高価なパソコン等、1年で一括経費として計上できない資産は、「減価償却」の対象となり、
   物品によって経費に計上できる割合、年数が法定されています。

    別途書類を提出する必要はなく、通常は青色申告による確定申告の際に法定の方法で計算されます。

   →減価償却のあらまし(国税庁)


   ◆従業員を雇う場合

    ・「給与支払事務所等の開設届出」を税務署に提出します(給与支払いから1か月以内)。
    ・「労働保険関係成立届」を労働基準監督署に提出します(雇い入れから10日以内)
    ・「労働保険概算保険料申告書」労働基準監督署に提出します(雇い入れから50日以内)
      →雇用保険適用のためです
    ・従業員が5人以上いる場合には「新規適用届」等を社会保険事務所に提出します。


   ◆家族を従業員として雇う場合

    ・「給与支払事務所等の開設届出」の他、
    ・「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出します(給与支払いから1か月以内)。

      →「専従者」は、個人事業主が15歳以上の同居の親族等を従業員とする場合で、
       給与を経費とすることが認められる制度です。
       配偶者控除・扶養控除が受けられない代わりに、個人事業主の所得税の控除額が大きくなります。


経費の範囲


   必要経費には、@売上に貢献する経費とA事業に関連する経費があります。

  @売上に貢献する経費

 
   例えば、各種セミナー、研修費用、専門書の購入費用、広告費用等、
   業務の拡大・収入に直結する費用です。

  A事業に関連する経費


   開業準備費用、行政書士会の会費(政治加入費用は除く)、
   事務所の家賃、光熱費、通信費用、従業員の給料、
   出張旅費、業務の必要上他士業に依頼した報酬等、
   業務を行う上で必然的に生じる費用です。


専用口座の開設


   ネットバンキングに対応している銀行での専用口座を開設する

   納税の前提として、収支・経費を明らかにしておくためにも、
   事務所専用の口座を開設しておくのが望ましいです。

   法人でなくとも、屋号(〇〇行政書士事務所)で銀行口座を開設できる場合がほとんどです。

   また、インターネットバンキングを利用すれば、
   月末の混雑している銀行で待たされるイライラもなく、ネット上で取引・出入金の確認が可能です。
   多くの銀行では会計ソフトに対応しており(Money Look)、
   ネット上の出入金データをそのまま簿記に取り込むことが可能なので便利です。

   →データ取得可能な銀行一覧

   とはいえ、実際に銀行に出向く必要も頻繁にあるため、
   事務所から近い銀行でなおかつネットバンキングに対応している銀行に口座を開設するのが望ましいです。

   専用のクレジットカードもあると便利


   クレジットカードの場合、法人以外での事務所名義の取得は難しいですが、
   インターネットでの買い物や、車のETCカード、各種契約等で必要となる場合があるので、
   業務専用の個人名義のクレジットカードを作成しておくのが便利です。 

   電車での移動等、現金払いでは記録漏れしやすい経費も、
   クレジットカードとICカードが一体になっているものであれば、
   利用明細で一目瞭然ですので、記録漏れの防止にも役立ちます。

   ネットバンキングと同様、クレジットカードの明細データも会計ソフトに取り込むことが可能です。

   年会費永久無料のクレジットカードも複数あります。
   一般のクレジットカードよりもポイント利率が高い場合や、特典の多いカードがねらい目です。

   例えば、「楽天カード」「セゾンカード」等


会計ソフトの活用


   会計ソフトでできること


   節税対策には青色申告が望ましいと述べましたが、
   青色申告(複式簿記)で作成すべき帳簿の手順はかなり複雑なので、
   簿記の知識がなければ、一から自分で作成するのは大変な作業です。

   しかし、市販の会計ソフトを使えば、
   勘定科目を決定してデータを入力するだけで比較的簡単に帳簿を作成することが可能です。

   税金の知識と帳簿の見方が分かれば、業務上も有利ですので、
   ゆくゆくは簿記のエキスパートになっていることが理想です。
   ソフトを活用すれば、無理なく知識を身に付けていけるのでおススメです。

   また、先ほど述べたように、ネットバンキングやクレジットカードの利用明細も
   ソフトと連携でダウンロードできますので、
   業務用の取引先を設定しておけば、自動的にデータ入力され、手間が省けます。
  
   専用のネットバンキングの口座を開設したり、専用のクレジットカードを作っておくメリットは
   この会計ソフトの活用で最もメリットを享受できるといえます。


  おススメの会計ソフト


   個人用の会計ソフトはほとんどが1万円前後で購入可能です。
   慣れてしまえばどのソフトも似たり寄ったりですので、
   身近で教えてくれる方がいる場合には、その方と同じソフトを使用した方が便利です。

   一度使い始めると、同じ会社の製品を使い続けることになる事になると思いますので、
   決めかねている場合には、無料お試し版をダウンロードして使い勝手を試してみてください。


   会計ソフトの中でもっともおすすめなのが、

  「やよいの青色申告14(新消費税対応版)」です。

  ・シェアNO.1=それだけ多くの人が使い勝手が良いと考えている。
  ・売れているので、使い方が分からなくてもネットで検索すればほとんどの疑問が解消される
  ・「弥生会計」というプロ仕様版の個人版なので、
   事務所の拡大で本格的なソフトを導入する場合でも移行がスムーズである
  ・スタンダード版は8,000円前後で購入できる

   →「やよいの青色申告14」ダウンロード


    
 
  →楽天市場  →Amazon


   他には、アマゾンレビューの多い順に挙げると以下のソフトがあります。

  ・「みんなの青色申告15 消費税改正対応版」    →お試し版ダウンロード
  ・「やるぞ! 青色申告2014 新消費税対応版」    →お試し版ダウンロード なし
  ・「ミロクのかんたん!青色申告8 (5年保証通常版) 」 →お試し版ダウンロード
  ・「ツカエル青色申告+確定申告 14 新消費税対応 」 →お試し版ダウンロード



   青色申告の基本知識とソフトの活用法を学ぶ

   ソフトに添付されたマニュアル以外でも、
   青色申告の基礎知識と会計ソフト(弥生会計を基準)の実用例が掲載されている書籍があるので、
   こちらも合わせて購入しておくと、青色申告に関する情報をほぼ網羅することができます。

   おすすめの書籍は、

   3日でマスタ-!個人事業主・フリ-ランスのための「会計ソフトでラクラク青色申告」

   です。

   300ページ弱の本ですが、分かりやすいのでサクサク読むことができます。

   また、会計ソフトのお試し版や申告に必要な書類や記入例が付録のCD-ROMに収録されています。


   
 
  →楽天ブックス →Amazon



税金Q&A


   行政書士として開業するに当たり、税金に関する素朴な疑問をまとめてみました。


   Q自宅で開業した場合の光熱費等は?

    →事務所の占有率(面積)で割って経費にする場合が多いようです。
     必要経費と認められるための合理性と証拠(領収書等)を揃えておくことが必須です。


   Q自宅の電話や個人の携帯電話、パソコン、自動車を使用している場合は?

    →電話・通信費用・ガソリン代は私用と業務の使用頻度・割合で経費に計上する場合が多いようです。
     区分できる場合でも、数か月間の統計の割合で計上するのが一般です。
     なお、当然ですが、もともと私用のために開業準備以前に購入した
     携帯電話やパソコン、自動車の購入費用は必要経費には含まれません。


   Q飲食費用は?

    →業務を行わなくとも毎日食事をするので、通常は経費と認められませんが、
    依頼者と打ち合わせをするための食事会であれば、認められます。
     ただし、接待費等は売上額によって経費と認められる上限があります。


   Q開業準備のための費用はどこまで認められる?

    →開業の半年から1年前に開業に要した費用であれば認められるのが通常です。
     例えば、開業のための書籍購入代金、セミナー出席のための旅費・交通費、
     事務所探しのための費用、自宅を事務所にするための改装費用等です。


   Q副業の収入と経費は?

    →例えばネットで通販サイトを運営している、
     書籍の出版や講演会での副収入がある場合(給与ではなく一時的な報酬)、
    その収入と経費は行政書士業との関係でどうなるのでしょうか?

     行政書士としての職業倫理に反しない限り、
     個人事業主であれば会社の定款のような縛りもないので業務の範囲に制限はありません。
     税法上も同様、一個人としてすべての収入に及びます。
     したがって、副収入・経費も行政書士業務の収入・経費と合算します。


   Q会社を辞めずに副業で行政書士をやる場合は?

    →給与所得者として納税している方で給与所得が2,000万円以下、
     かつ、年間20万円以上の副収入(経費を除く)があれば、申告が必要です。
     上記に該当しない場合でも、「雑所得」として申告する場合には、
     経費を除いた収入が給与所得に合算されて課税されます。


   Q専従者給与と行政書士業務での収入は?

    →例えば、父が個人事業主として商売をしていて、自分は専従者として給与を受けていた場合、
     行政書士として開業するとなると専従者の申告は取り下げた方が良いのか?
     行政書士業務の収入や経費はどのように扱われるのか?

     父が法律事務所や会計事務所を経営していて、行政書士の業務と関連性がある場合には
     その事務所から給料をもらうという形で行政書士として登録されている方が多いです。

     専従者として給料をもらっている場合には給与所得者となるので、
     自ら事業主となることはできず、青色申告もできませんので、
     税務署への開業届は不要となります。

     父の事業が行政書士の業務とは全く関係のない場合には若干注意が必要です。

     専従者は継続して6か月以上、個人事業主の業務に専念する必要がありますので、
     従業員としての業務と両立する範囲でなければ副業とは認められない可能性があります。

     もし、行政書士業務の収入が多い場合には、「専従者」の要件を満たさなくなりますので、
     「専従者」の申告は取り下げて、自ら個人事業主として納税することになります。
     専従者の取り下げは随時可能です。

     行政書士業務の収入が少ない場合には、
     専従者のまま父から給与をもらいつつ、上記のサラリーマン同様、
     行政書士としての収入は「雑所得」として申告する方法があります。

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